原っぱ大学 HARAPPA UNIVERSITY原っぱ大学 HARAPPA UNIVERSITY

チケット販売中 facebook 体験・見学申込

原っぱ大学 働きごこちインタビュー Vol.1 中井祥子

 その場にいるだけで遊びゴコロが溢れてくる存在

千葉県印旛郡生まれ、千葉佐倉の森キャンパス事業リーダー
2006年イベント制作会社入社、半年で退社。2007年リクルート入社、不動産領域の営業を担当。学生時代から続けているラクロスのトレーニングを優先するため、20時退社できる環境を得る。2011年3月東日本大震災当時、生後2ヶ月の娘を抱えていたこともあり、今後の働き方を考えるようになる。2014年退社を決意。

2014年スマートニュースにて働く。週20時間勤務、週1回オフィスに出社するワークスタイルにシフト。子どもたちに向けたメディアリテラシープログラムを立ち上げ、公教育(小学校や大学)に出向き特別授業を行う。

2015年原っぱ大学と出会う。当時4歳の娘を連れて、逗子の原っぱ大学1期生として入学。子育てをする中で、自分の中に眠っていた「私は泥んこ遊び、水遊びが大好きだった」という感情を思い出し、全国の野外学校や野遊び活動を渡り歩き、原っぱ大学に辿り着く。いつか野外活動を自分で主宰したい気持ちが強まり、放課後NPOにて半年修行。自分の価値観と一番近い場が原っぱ大学であると確信する。

2017年 原っぱ大学千葉キャンパス開校。立ち上げメンバーとして関わり、柏から佐倉に拠点を移し、現在事業リーダーとして活躍中。

大人が”本気で遊んで解放される”という原っぱ大学の価値観に共感

原っぱ大学が他の野外活動や自然教育と異なる点は、大人の関わり方です。大人が本気で遊べるし、どんどん遊ぼうぜ!という原っぱの価値観が、私は好きなんです。娘が生まれてから、親子を対象とした全国各地のあらゆる野外活動に参加してきました。私が娘を連れて、初めて原っぱ大学へ参加した時のことをよく覚えています。私に向かって、子どもたちがいきなり水鉄砲をビシャーと飛ばしてきて、すごく楽しそうに走り去って行ったんです。大人の私に、遊びをけしかけている感じが嬉しくて(水鉄砲を放った子たちは大人に怒られていましたが笑)。大人が子どもに遠慮するのではなく、大人である私自身も思いっきり遊びたい。そうだ!こういうことがしたかったんだ!と気づき、大人が本気で遊んで、解放されるという価値観にすごく共感しました。

2017年に始まった千葉キャンパスの立ち上げは、現在の佐倉ではなく柏でした。素敵なキャンプフィールドで、自然がむき出しというより、ある程度美しく整備された自然環境で、小さい子を連れた親子には過ごしやすい場所でした。しかし遊びを生み出すという観点で、私を含めチームは試行錯誤の連続で、常に模索する日々でした。その引っかかりになっていたのが「自然がそのままの姿として存在する野山や森で遊びたい」という私自身の気持ちです。次第にそれはどんどん強くなり、新たなフィールドを求めて、塚越さん(ガクチョー)とともに、千葉周辺の至るところを巡りました。結果的に私が高校時代を過ごした地元の佐倉で、山や森を貸してくれる地主さんと出会うことができたんです。

素晴らしいご縁が重なって、佐倉市民の森に隣接する、広葉樹から竹林まで広がる豊かな森をお借りすることができました。近くには田んぼや沼の水辺があり、まさに私が求めていた理想のフィールドでした。田んぼにダイブしたら楽しいだろうなぁ、沼に手作りのイカダで出航してみたいなぁとワクワクが膨らみました。柏から佐倉へ引っ越しをして、佐倉の森を遊び場にしていくためにゼロから開拓するプロセスが必要です。既に知見のある逗子のスタッフに応援を頼むこともできましたが、場を自分でゼロから作り上げて行きたいと考え、開拓メンバー兼佐倉フィールドスタッフを集めました。弱った木を倒し、草刈りをして、森のどこまで遊べるか、この傾斜でどんな遊びをしようか、と試行錯誤。この期間は、チームにとっても私にとっても、すごく良い時間でした。

先行事例にとらわれず、フィールドや人を見つめて個性を活かす

佐倉の森キャンパスを整備し、プログラムを練り、開校準備をしているときの話です。当初、実は私もチームも「先行く逗子キャンパスに負けたくない!」という競争意識があったんです(笑)。遊びの企画も逗子の真似はしたくないし、どうせなら逗子でやってないことをしようと。今思えば何でそんなことを考えていたのか分からないんですが、まだ自信がなかったのかも知れません。あれこれとチームで模索する中で、だんだん意識も変化し始めました。原っぱ大学で大事にしている価値観は変えなくとも、千葉独自で変えてもいい部分はあっていい。フィールドの地形や環境、スタッフのキャラクター、参加者の個性をよく観察すれば、自ずと「ちょうどいい感じ」がオリジナリティとして出てくるんじゃないか?と。そこから千葉キャンパス独自の夜の森を探検するナイトハイキングや、早朝カブトムシツアー、竹スライダー、竹イカダが生まれました。先行事例にとらわれ過ぎてた時よりも、スタッフがそれぞれとても楽しそうにしているし、今は「自分たちがいかに楽しめるか?遊べるか?」を基軸にして場を作っています。

スタッフひとりひとりのキャラクターや背景を、お互いが理解し合うことで、もっと楽しいアイデアが出てきます。例えばナイトハイキングでは、あるスタッフが影絵を企画したり、楽器を演奏してみたらどうかと提案したり。どれもこれもスタッフがひとりの人間として、内側から溢れる「これやったら絶対楽しい!」を発露してくれて、そのワクワクが子どもたちにダイレクトに伝わる。楽しい!面白い!を分かち合えて、スタッフそれぞれに十分な手応えがありました。スタッフと参加者という境界線が溶けてなくなり、みんなが一体となり満たされた場になったんです。素晴らしい成功体験を千葉独自で積むことができました。お互いを知り、理解し合うための仕組みとして、週一回のミーティングの他に、研修も重ねました。

また千葉独自の変化という点では「異年齢コースのプログラム」という特徴があります。それまではある程度の年齢で区切り、リトルコース(2−4歳の親子)ギャングコース(5-10歳の親子)とプログラムを考えていました。2017年12月から佐倉で体験会を開催している時に、年齢帯を幅広くした方がこのエリアにはフィットすると考え、2歳から10歳までの異年齢コースを原っぱ大学で初めて作りました。異年齢という言葉は、最近よく耳にするキーワードでもありますが、現代の子どもたちが異年齢の環境でのびのび過ごす機会は、実はすごく少ない。学校や習いごとは同年代が基本だし、年齢が同じだからという区切りの中で分けられて、ちょっとでもそこからはみ出たり、平均値に追いつけなかったりすると途端に苦しくなる。社会に出ると異年齢が自然なことなのに、子どもが育つ環境では同年齢が当たり前という矛盾があるんです。異年齢で遊ぶ子どもたちは本当にのびのびしているし、親にとってもすごく良い環境だと実感しています。

異年齢、異世代の交流の良さに気づく日々

年齢が違うことで、できることも知っていることも違えば、みている世界も違う。それをお互いが自然に尊重できるのが異年齢の特徴です。例えば、工具を使って小屋を作る場合、小学生高学年の子どもたちに工具を渡して、ここやっといてー!とお願いすると、どんどんやってくれます。その様子を低学年の子どもたちは羨望の眼差しで見ている。すると「やってみる?こうやるんだよ」と高学年の子たちは、とても自然に下の子に教えてくれる。またしばらくすると、今後はもっと小さい子がやってくる。また同じことが繰り広げられていく。そんな循環が自然と起こるんですよね。親世代の交流も同じで、お互いの眼差しがとても温かいんです。まだ子どもが小さい親からすれば、1人で食事ができてガシガシ動いている小学生は全員立派に見えますし(笑)その逆の立場からすれば、2歳の子どもたちを見守るだけで、ただただ癒される。こちらも良い関係性ですね。

スタッフの構成も同じで、男女も偏らず、世代も高校生や20代から60代まで幅広く、多様であればあるほど、とてもバランスがとれて良い場になります。原っぱで働くスタッフは多様で、いろんな個性の持ち主が集まっていますが「外が好き、野遊びが好き、遊ぶのが好き、面白がるの好き、人が好き、どんな親子もこの場を楽しめるよう工夫したい」と共通して大切にしていることがあると思います。

ゆくゆくは海外の子どもたちと遊ぶ場をつくっていきたい

私が原っぱで仕事をしていて、一番楽しい瞬間は「大人が解放された!」と感じるときです。もちろん泥まみれ、水浸しになって遊んでいる時も楽しいのですが、水鉄砲をママたちに飛ばして、やったなぁーーーー!とやり返される時、ママたちの心がパーンと弾けた時はとても嬉しいですね。探検で我先に!となっているパパや、子どもより夢中になってペンキを塗っているママ、そんな遊びを心から感じて身体が動いている大人たちを増やしていきたいし、私自身がそう在りたいので、「大人が本気で遊ぶ」ことを手応えとして感じれることが喜びです。

今後、原っぱ大学でやってみたいことは、海外の子どもたち、大人たちと本気で遊ぶ場を作ってみたいですね。最近米国ヨセミテのツアーに個人的に行ってきたんですけど、そこで出会ったスタンフォード大学に通う韓国の子がいて。その子のお母さんが野外遊びみたいなことを韓国でやっていて、すごく重宝されているそうで。なんだ、海外にもニーズがあるんじゃないか!と感じて、日本の原っぱのフィールドに来てくれてもいいし、海外に私たち原っぱチームが遠征して、思いっきり解放される場づくりをしてみたいですね。