3.耳をすませば。
ジブリのアニメの話ではありません。好きなアニメだけど。
今は昔、東京で会社員をやっていたころ。数か月に一度、高円寺のJIROKICHIという老舗ライブハウスに音楽を聴きに行くのが数少ないリラックス&自分を解き放つ時間でした。JIROKICHIはブルース、ジャズの小さな名店。怪しげな地下の小さなフロア。目と鼻の先で演奏するミュージシャンたちの波動みたいなものが直接身体に訴えかけてくる僕にとって特別な空間でした。
音楽のことは全く詳しくないのだけどJIROKICHIで繰り広げられるプロたちの気持ちいい即興の演奏は今も思い出すだけでも身体の芯から熱くなって揺れ出しそうになります。
僕が行く日によく登場する太田恵資さんというヴァイオリン奏者の方がいました。ヴァイオリンと聞いて思い浮かぶスタイルとは全然違う、見たことも聞いたこともない演奏をする方。
その日も太田さんは他のミュージシャン達と気持ちのいい演奏を繰り広げていました。前半のステージが終わって休憩時間、一緒にライブに行っていた友人のN君がたまたま太田さんとトイレで一緒になりました(JIROKICHIは小さなライブハウスなのでミュージシャンもオーディエンスも同じトイレに並びます)。
N君は勇気を出して太田さんに話しかけたそう。「すごく気持ちのいい演奏でした!どうやったらあんなにかっこいい演奏ができるんですか?」
興奮して話しかける友人に太田さん静かに答えたそう。「とにかく耳をすませるんです。人の演奏をじっくり聴く。それだけです」。トイレから戻ってきたN君は鼻息荒くこの話を僕に聞かせてくれました。
10年以上経った今もふとこの太田さんの言葉が浮かびます。
野遊びもそうだなと。天気、気温、湿度、フィールドの様子。一緒に遊ぶ仲間たちのコンディション、興味。目の前にある道具etc. その日その日の状況やメンバーによって遊び方は無限に広がるはず。願わくば、自分の中にある「正解」や「型」を押し付けるのではなくて、太田さんのヴァイオリンのように、周囲の環境や仲間の様子に「耳をすませて」、その瞬間、その瞬間の最高の遊びを生み出していけたらなと思います。
2017年1月11日@自宅